◎第343回 塩の道(平成30年1月26日)

相 互 往 来 の 往 還 道

保存活動から新たな取り組みへ

 今から50~60年前になるが、筆者が東京から夜行列車に乗り、宇野・高松の連絡船を経由して土讃線で四国に入ると、瀬戸内海の海岸のあちらこちらで塩田が見られた。 
 過去の物流を知る手がかり掛かりが絹の道であり、塩の道でもある。アジアと欧州のシルクロードを最近では、一帯一路といって、中国の国家戦略の大事な柱になっている。 
 太平洋に面した高知県でも、文献によると、大正から慶長年代(400年ほど前)には、香南市の海岸では製塩が盛んで、一大産地を形成していたとのこと。その中心が赤岡で、塩市が開かれていたようだ。
 この塩を奥地に運ぶための道を「塩の道」と呼んでいる。
 塩生産地と奥地を結ぶ重要な産業道で、塩に限らず生活必需品も運搬され、相互往来の往還道でもあった。当時は主に馬の背に塩や雑貨を積んで往来したようだ。
 今は、香美市物部町大栃から、香南市赤岡町の約30キロメートルの区間を「塩の道」として整備しているが、これは実はほんの一部で、物部町大栃から奥に入り、三つのルートで四国山脈を越え、徳島へとつながり、海から山へ、奥地から浜へ、まさしく多くの人の生活を支えた道であった訳だ。 昔はなくてはならないこの「塩の道」も、時代とともに必要性がなくなり、最近まで、道沿い、目的地までの距離を示す屋敷丁石と呼ばれる大きな石も倒れたままとなっていたようだ。
 消えていた古道を復元し、守り育てる仲間により、15年前ほどから、ボラティア活動が始まり、現在では「土佐塩の道保存会」として活動が継続されている。
 彼らによれば、昔ながらの山道を生かしている塩の道は、当時にタイムスリップしたような気分でウォーキングでき、初心者向けも含め多くのコースが整備され、ガイドのサービスもある。各種イベントも人気で、県外からの参加者も多く、外国人にも好まれるとのこと。
 塩の道ブランドの商品も開発されていて、地元の野菜を使った「塩の道弁当」は竹の器や木の葉を使い、自然のありがたみを感じることができる。
 また、地元特産の「ゆず」を使ったオーガニックな加工品も数多く揃えている。
 筆者も、地元の方々の献身的な活動に心を動かされていて、この過去の遺産を守り続け、さらには現在の生活の中でも、自然保護、歴史遺産の保護はそれなりに価値がると考えている。
 日常、我われが使用している塩はほとんどが工業塩と理解しているが、高知県でも、昔ながらの海水から塩を取り出し、天日で乾かす、時間と手のかかる塩を生産している方がいる。
 これらは、当然、価格的には高くなるが、その味と風味は工業塩とは全く違っている。 この手をかけた塩を活用した美味しいスイーツがあり、大変人気なヒット商品もある。
 保存会の方々が主催するイベントに何回か参加させていただく機会があるが、集まる方々との交流を深めることにより、何か今後の新たな取り組みや、目指す方向が見えてくるような気がしている。
 やはり大切なのは、人と人との触れ合いにあるに違いないと感じているし、自分も地域のために何か役に立ちたい。

2017年01月26日