◎第346回 土佐の小夏(平成30年3月9日)

夏 の 訪 れ を 告 げ る 酸 味 と 甘 み

旬の時期に届けることが 物流の役目

 高知も今年の冬は、地元の方々が寒い寒いと言って過ごしていたが、さすがに3月になると急に暖かくなってきた。暖かくなると人間の体は美味しい果物が欲しくなる。自然の不思議だが、この時期になると、高知では独特の美味しい味の文旦が出回る。文旦は生産者がほとんど年末に収穫して、適度な温度で保管する。この暖かくなる時期に、いっせいに店頭や市場に並ぶ。しばらく文旦が出回ったのちに、3月末ごろになると小夏が出回るのだ。
 南国土佐の初夏は、あっという間で、そのごくわずかな期間に旬を迎えるのが小夏。高知では、店頭に小夏が出回ると夏の訪れを感じる。高知で小夏と呼ばれが、宮崎県では日向夏、愛媛県ではニューサマーオレンジと呼ばれている。
 小夏は、18世紀初めに宮崎県のある邸宅で偶然発見された。当時は酸味が強く食べられなかったそうだが、その後、改良され広く栽培されるようになったようだ。種の起源は柚子が突然変異したものと考えられている。
 宮崎県で生まれたこの柑橘が、土佐小夏として広く全国に愛されるようになったのは、黒潮暖流がもたらす暖かな気候風土、そしてリンゴのように皮をスルスルとはぎ、白い甘皮と一緒に食べる方法を、高知県の農林技師の方が考案されたことによるといわれている。
 小夏の白い甘皮は肉厚でふかふかしており、それが小夏の爽やかな酸味に加味され、上品な甘みを感じることができる。夏みかんのように酸っぱくなく、みかんのような甘さもない。喉をスーッと潤すジューシーさが何ともいえない。
 数年の間、高知の柑橘の生産者とお付き合い続ける間に、果物の味にトコトンこだわる生産者S氏と知り合いになり、彼の果物栽培に関するこだわりを知ることになった。
 S氏は、黒潮香る海岸沿いに農場を探し続けて現在3カ所で栽培している。適地でないと本物はできない。美味しいみかん作りのポイントは、風通しがよく、太陽が降り注ぎ、土地のもつ温度が暖かく一定していること。それぞれの果物の最も食べごろに時期に収穫すること。これらの点にこだわり続けて栽培しているのだ。
 時々S氏から、作業が終わる夕刻に電話をいただき、近くで一杯やろうといわれるので、喜んで出かけるのだが、ご本人はいつもビールグラスに烏龍茶で、みかん栽培のイロハを伺うはめになる。おかげで素人の私が短期間で多くのことを学ばせていただいている。したがって、販売先にかなりレベルの高い内容をお伝えすることができるようになった。
 最近、不思議に感じるのが、生活者が求める時期に、それなりの農産物や果物が市場に出回ということだ。これは長い間に生産物が消費者に選別されてきているのか、生活者が求める時期に農産物が収穫できるタイミングになるのか。いずれにしても自然界の素晴らしさに時折、関心するこの頃だ。
 物流の役割は、それぞれの作物の旬の時期に、タイミングよく届けることにあると、今さらのように感じている。

2018年03月09日