◎第371回 人形浄瑠璃文楽 (31年3月29日)

清流の町「安田町」

独特の文化と香りを感じる町

 桜の開花を目の前にして、高知もだいぶ暖かくなり、晴天、曇り、雨の天候が順番に入れ替わる時期になった。
 今日の話題は、高知県の西部地区、安田町に生まれ、大阪文楽に明星と輝いた六世竹本土佐太夫の軌跡展が、昨年から今年の三月末まで安田町まちなみ交流館で開催されて、人形浄瑠璃文楽の講演があるということで、地元の友人を誘って見に行ったこと。出演者は語り、歌い上げる太夫と三味線の奏者、それに人形を操る方々で構成され、私にとってじっくり鑑賞するのは初めてだった。
 演目は、「壷坂観音霊験記」の「沢市内より山の段」で、休憩を挟んで2幕、約1時間半の講演だった。
 あらすじは、奈良の壷坂寺近くに住む、お里・沢市の夫婦。目の不自由な沢市は、女房お里の手内職を頼りに細々と暮らしている。そんな折、毎夜お里が明け方に家を抜け出しており、もしや浮気をしているのでは・・・との思いから「ほかに好きな男ができたんじゃないのか」と問い詰める沢市。お里は、沢市の目が開くよう壷坂観音へのお参りに通っていたことを打ち明ける。沢市は誤解を詫び、その夜、共に壷坂観音にお参りに出かけた。参詣を済ませ、お里を先に家に帰らせた沢市は、愛する妻の足手まといになっては申し訳ないと、谷底へ身を投げる。沢市の亡骸を発見したお里も、悲しみのあまり後を追って身を投げた。そこへ現れた観音様のご利益により2人の命は助かり、沢市の目も開いた。お里の献身的な愛情が奇跡を起こす、文楽には珍しいハッピーエンドの演目である。
 人口減少の高知県で、安田町は中芸に位置し、人口2,500人程の小さな町だが、講演には近隣や県内各地、県外を含め600人ほどの来訪者が訪れ、会場はいっぱいだった。
安田町は黒潮あらう太平洋に面し、町の中心部を流れる安田川流域に広がる清流の町だ。下流の平野部は、温暖な気候と自然環境に恵まれ、施設園芸発祥の地として発展し、ナスやミョウガ、トマトなどが盛んに栽培されている。
 また、黒潮の恵みの海の幸や上流の魚梁瀬杉(やなせすぎ)を生かした製材業、清らかな伏流水を利用した醸造業など、商工業の町でもある。
 清流安田川は鮎釣りのメッカで、流域にはキャンプ場も整備され、シーズンには多くの観光客で賑わう。神峯山には、四国霊場27番札所などがあり、安田町の自然と歴史、文化を散策することができる。
 私が感じるのは、地元の人たちが幸せに暮らしているということだ。60キロの道のりを車で走って会場に着いたが、友人以外にも何人かの知り合いと会うことができた。狭い地域だけに、特に人と人のつながりが強いと感じるとともに、昔から独特の文化の香りを感じることができる。
この町は、うたい文句に「やすだ時間」といって、ゆったりと過ごせる感じが伝わる。この地域は、安田町や田野町、奈半利町を中心に北川村、馬路村を合わせて5つの町と村で独特の魅力を感じることができる。
 高知県では多くの農産物が栽培されているが、東西に長いため、物流がネックになっていることもある。そのため、地域のさんとも一緒になって、物流・流通の改善案を検討している。

2019年03月29日